2018年12月6日木曜日

いまさら歴史?

 「気象学と気象予報の発達史」(丸善出版)はアリストテレスなどの古代ギリシャ自然哲学における占星気象学から、いわゆる科学革命の前後に起こる各種気象測器の発明、19世紀の気象観測網の整備と天気予報の開始、現代の数値予報、気候モデルの開発に至るまでの気象学と天気予報の歴史の系統的な通史となっている。これまで日本ではあまり紹介されてこなかった気象学にまつわる様々なエピソードを含んでいる。本の目次を挙げておく。

1. 古代ギリシャ自然哲学における気象学
2. ルネサンスによる古代ギリシャ自然哲学のほころび
3. 科学革命の中での気象学
4. 気象測定器などの発展
5. 気候のための観測網の設立と力学の大気循環への適用
6. 嵐の解明と気象警報の始まり
7. 近代日本での気象観測と暴風警報
8. 19世紀末の気象学の発展と気象予測の行き詰まり
9. 気象予測の科学化と気象学のベルゲン学派
10. 数値予報と気候科学の発達
11. 国際協力による気象学の発展


 いまさら歴史など古くさいと思われる方もおられるだろうが、結局人間は歴史からしか学べない面がある。また、いろいろな発明発見は、その経緯を知ると理解が早まるし、その応用も利きやすくなる場合がある。例えば気象学の教科書に書かれている法則なども、たいがいは証明などを辿ることはあっても、なぜそういう法則が発見されなければならなかったのかまでは教えることは少ない。しかし、そこに重要な背景があったりすることがある。

 ひとつだけ例を挙げる。大気力学の教科書には「スケールアナリシス(scale analysis)」という手法が解説してある。やり方としては、気象予報のプリミティブ方程式の中で現実大気の典型的な値を当てはめて、値が大きな項だけ残して小さな項を無視するのである。私はこれをアプリオリに習ったときに多少なりとも抵抗を感じた。なぜこんな近似をするのか?と。

 しかし、この本の10-3-4「準地衡風近似とその利点」で述べているように、これは大気力学の複雑な非線形方程式を解きやすくための深い知恵であって、理にかなっているだけでなく、これによって長波だけに焦点を当てる準地衡風近似という便利な手法が可能となった。これはまさにスケールアナリシスという発想のおかげであり、ジュール・チャーニーという天才による発見がこれを可能にした。これによって当時の気象学は大きく進歩することができた。

 このように紐解いていけば、気象学のいろいろな発見や考え方も身近に理解できるようになるかも知れない。そういうこともこの本を書いた動機の一つである。


なお、2019年までにこのブログで書いたテーマは「これまでのタイトル(1~60)の整理」で俯瞰することができます。








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