気球「Phoenix」での飛行の様子 |
有人気球による気温の観測例(Rotch, 1900) 横軸は気温(華氏)、縦軸は高度(フィート)。 低い方からハゼン(1887年)、グレーシャー(1862年)、 ベルソン(1898年)、ベルソン(1894年) |
有人観測も含めて初期の気球観測にはさまざまな問題に直面した。気温を測定するには日射や気球本体からの放射の影響を防がなければならなかった。また上昇・下降しながら観測するため、測定器の応答速度が遅いと異なる高度の気温を記録することになった。逆に気球の動きが遅いと、空気が測定器付近に滞留することもあった。そのため、気温や湿度の測定には感部の適切な換気が必要だった。観測データはそれらを考慮して、様々な補正が行われて使われた(Rotch, 1900)。
また、上空の寒気、強い日射、着陸時の衝撃から守る必要があるため、測定器類には単純で堅牢な構造とその適切な保護が必要だった。そのために本の4-7「メテオログラフ(気象自動記録装置)」で述べたように、1890年頃フランスのリシャール社が、時計で回転するドラム紙に気圧や気温などを同時にインクで記録するバロサーモグラフ(自記気圧・温度計)を開発すると、それが高層気象観測にも用いられた。ただし高空ではインクが凍ることがあるため、回転ドラムにすす紙をセットして針でひっかいて記録するなど工夫して使われることもあった(Rotch, 1900)。
リシャール社のバロサーモグラフ (Baro-thermograph of Richard. Rotch, 1900) |
(つづく)
参照文献
- Hoinka-1997-The tropopause: discovery, definition and demarcation, Meteorol. Zeitschrift, N.F. 6, 281-303.
- Rotch-1900-Sounding the ocean of air. Six lectures delivered before the Lowell Institute of Boston in December 1898. - London: Soc. for Promoting Christian Knowledge.
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