このブログは 「気象学と気象予報の発達史 」の一部です。
このブログは気象学史に焦点を当てているので、今後評価が変わる可能性がある近年のことについては、あまり触れないようにしている。しかし、過去の気候は今後それほど変わらないだろう。それで近年の秋の傾向について述べる。
今年(2024年)の秋も異様に暑かった。ところが12月に入ると、関東周辺では一転して肌寒い日が多くなり、秋らしい日があまりなかった印象がある。報道各社からも秋の高温について、「11月半ばに20℃超「秋がない?」異例の暖かさ」とか、「11月最高気温 東京都心100年ぶり更新」とか、「11月中旬に…季節はずれの夏日!」など数多くの報道があった。
このブログの「近年の秋の気温上昇について」で、近年秋がこれまでより涼しくなくなってきていることを述べた。それで例として、もう少し詳しく1960年から2024年までの9月~12月の各月の8月との気温差の経年変化を簡単に調べてみた。それが下のグラフである。
日本の秋における8月平均気温との差の経年変化図地点は、気象庁が日本の平均気温を算出している網走,根室,寿都,山形,石巻,伏木(高岡市),飯田,銚子,境,浜田,彦根,宮崎,多度津,名瀬,石垣島の15か所の1960年から2024年までの各月の平均気温を用いた(2024年の12月のデータは入っていない)。これらの地点を平均した月平均気温を8月から12月まで算出し、各月の平均気温の8月との差を求めた。
データは気象庁がホームページで公表しているものを用いた。なお気候変動社会の技術史(日本評論社)の公式解説ブログ「情報のグローバル化 」で述べたように、気象データの公開性がこのような解析を誰でも行うことを可能にしている。
右端の数式はこの気温トレンドの回帰式である(100年間で、9月が0.79℃、10月が0.82℃、11月が0.24℃、12月が-0.65℃の変化を意味する)。この傾きが正だと夏との気温差が縮まり、負だと差が大きくなることを意味する。すると9月、10月、11月は傾きが正となっており、8月との気温差が年々縮まってきていることがわかる。ところが、12月は8月との気温差が逆に広がっている。
つまり、秋はこれまでより暑い日が多くなってきているが、12月になると一気に寒い日が多くなることを意味する。これは秋が短くなってきているという体感とも一致している。なお、これは8月のとの気温差を取っているので、地球温暖化などによる平均気温全体の上昇は入っていないことに注意していただきたい。8月の平均気温が大きく上昇していると、気温差が減っている以上に秋が暑くなっている可能性もある。
グラフは「おおっ」というような一目でわかる劇的な変化を示しているわけではないものの、数的な解析からは明確に傾向がわかる。これはあくまで暫定的で簡易的な解析であり、期間や地点を変えると結果が変わることがある。
自然科学者は、このような地道な作業を繰り返し行っている。モデルなどを使うこともある。そして、もっと詳しい解析から確度の高い情報を読み取れれば、その新しい情報が論文などを通して専門家による一定の評価を得てから、発表されている。
(次は 気候データのデータ解析モデルとは)