歴史とは異なるが、近年の気温状況を少し見てみる。
10月7日に気象庁は、2021年の10月9日から10月15日までの予想気温を発表した。それによると、平年と比べて気温が高くなる可能性を、以下の図のように全国どこでも紫の70%以上と予想した。しばらくまだ平年より暑い日が続きそうである。
赤矢印は15地点の平均
その結果、図に示すように各地点で気温は確かに上昇しているが、秋の気温だけ上昇率が高い地点が多いことがわかる。また、それぞれの季節の右端の赤色の「平均」の赤の棒グラフ(矢印)を見ると、平均の気温上昇率は他の季節は0.25℃/10年程度であるが、秋だけ0.31℃/10年であることがわかる。これは秋の時期に夏に近い気温の期間が長くなってきていると言えるかもしれない。また体感的にはいろいろな感じ方があろうが、一つの感じ方として秋が短くなってきているということになるかもしれない。皆さんはそう感じたことはないだろうか?
実はこれを裏付けるように、Urabe and Maeda (2014)も1999~2012年の平均で見て9月と10月の気温が、平年値より0.2~0.3℃高くなっていることを示している[1]。この高まりは6月を除いて他の月では見られない。彼らの論文はこの期間に「夏と秋の気温」と「冬と春の気温」の差が大きくなっていると指摘している。これは日本付近だけの状況のようである。
この気温差が大きくなる原因について、Imada et al. (2017) は、数値モデル計算のアンサンブルによって、12月から5月までは東ユーラシアから日本にかけての低気圧が気圧をより下げることによって寒気の流入が増えて温暖化を抑え、6月から11月までは東アジアから北アメリカにかけての高気圧がより発達することによって温暖化を高めている可能性を示唆している[2]。これらは他の様々な要因の一部である可能性もある。
いずれにせよ、近年秋がこれまでより涼しくなくなってきていることは事実のようである。
[注]計算には気象庁がホームページで公表している月平均気温を用いた。規定の観測要件を満たないためにフラグがついたデータもそのまま用いている。上昇率の計算にはnon-parametric Sen’s slopeを用いた。
参照文献
[2] Imada Y., et al., (2017) Recent Enhanced Seasonal Temperature Contrast in Japan from Large Ensemble High-Resolution Climate Simulations. Atmosphere, 8, 57; doi:10.3390/atmos8030057.
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