2019年10月7日月曜日

気候学の歴史(10): モデル技術を用いた気候再解析 (History of Climatology (10): Reanalysis based on Data Assimilation)


 気候の将来予測に欠かせなくなった気候モデル、地球システムモデルであるが、そのベースとなっている気象モデルの技術はこれまでの歴史的な気候データに対しても大きな変革をもたらそうとしている。本の11-5-6「プリミティブモデルの発達」で述べているように、過去数十年間の既存地点の観測値から、その期間の気象要素の全球格子点での気象データを、数学的な手法(データ同化手法: Data Assimilation)を用いて物理学的に合理的に推測することが行われている。

 これはいってみれば過去の気候の数値的な再現であり「気候再解析(Climate reanalysis)」と呼ばれている。気候再解析はこれまで観測値がなかった地域や上空を含めて、全球の格子点上の気象データを時間的・空間的にシームレスに推測する。こうやって算出した再解析値を用いれば、過去の気象や気候のイベントをあたかもタイムマシンを使ったように詳しく分析することが可能になる。気候再解析は新たな気候学研究を支えるようになってきている。

なお、このブログの「データ同化に革新を引き起こした佐々木嘉和」で、データ同化と彼の功績を補足した。

(このシリーズおわり:次は「世界規模観測網(レゾー・モンディアル)と国際政治」)

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