古今東西、昔は大風や雷は神様が起こすものと思われていた。そして、それを引き起こす風神と雷神は、俵屋宗達の風神雷神図が有名である。風袋を持つ風神と太鼓を叩く雷神である。この風神と雷神は日本人と相性が良かったようで、尾形光琳や酒井抱一によっても再描写されている。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E7%A5%9E%E9%9B%B7%E7%A5%9E%E5%9B%B3#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Wind-God-Fujin-and-Thunder-God-Raijin-by-Tawaraya-Sotatsu.png)
「天人相関説と気象学(2) 日本での天人相関説 」で述べたように、9世紀後半から10世紀にかけては、災害や怪異を天の譴責ではなく神・怨霊の崇りと見なす傾向が朝廷内で強まった。その頃から天神信仰の一環として風神雷神があったようで、北野天神縁起絵巻にも太鼓を持った雷神が描かれている。
また、このような風神雷神は仏像(正確には眷属像だが)にも残っている。その像としては三十三間堂の風神と雷神が有名だろう。これは鎌倉時代の作と考えられており、国宝となっている。なお、博多の櫛田神社の拝殿の破風に木彫りの風神と雷神がある。櫛田神社の創設は天平時代と古いが、現在の社殿は豊臣秀吉によって造営された。
櫛田神社の雷神
櫛田神社の風神
この風袋を持つ風神と太鼓を叩く雷神という形はどこが起源なのかは、はっきりとはわからない。シルクロードのタクラマカン砂漠の仏像の絵にも風神と雷神が描かれているが、その形は日本のものと大きく異なっているそうである。雷神はなぜか鶏と関係があったらしく、鶏に似た怪の姿の雷や獣との間の子みたような奇怪な雷などいろいろあるらしい[1]。
さらに、西洋の風神と雷神は日本とはだいぶ趣が異なるようである。ギリシャ神話の風神アイオロスは、袋を持った神である。ホメーロスの長編叙事詩「オデュッセイア」において、トロイ戦争後ポセイドンの怒りを買って放浪していたオデッセウスは、アイオロス島(エオリア島と記すこともある)に漂着した。風神アイオロスから西風とそれ以外の風を別々に詰めた袋をもらい、西風を詰めた袋を開けることによって無事帆船で故郷イサカに帰着できそうになる。ところが、袋に宝物が入っていると思った乗組員が他の風が入った袋を開けたため、逆風によってアイオロス島に舞い戻ってしまうのは有名な話である。
また、アテネにある風の塔にはそれぞれの風向によって8つの風神が彫られているが、彼らのいくつかは袋のようなものを持っている。しかし、西洋の風神には、むしろ口から風を吹く神の像も多い。
一方で、西洋の雷神はゼウスであり、稲妻は彼が放つ矢である。また北欧ではトール(またはソー: THOR)という雷の神も知られている。
雷神トール
(https://en.wikipedia.org/wiki/Thor#/media/File:M%C3%A5rten_Eskil_Winge_-_Tor's_Fight_with_the_Giants_-_Google_Art_Project.jpg)
雷の象徴は西洋では稲妻であるのに対して、日本では雷鳴である太鼓であることは対照的である。日本の大太鼓は直径が数メートルになるものもあり、西洋のドラムよりはるかに大きく、ズシーンと響く音に迫力もある。また、日本では祭りというと大小の太鼓が使われることが多い。日本人は太鼓の音が好きなのだろうか?日本の雷神が太鼓を持っていることは、そういうこととも関係があるのかもしれない。
(次は「データ同化に革新を引き起こした佐々木嘉和」)
参照文献
[1]中谷宇吉郎, 雷神, 中谷宇吉郎随筆選集第三巻, 1966
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